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経営者インタビュー11:義農味噌株式会社 代表取締役社長 田中正志氏

しばらくお休みをしていた経営者インタビュー。第11回目にお話しを伺ったのは、今年の2月に「第8回四国で一番大切にしたい会社大賞」で「中小企業基盤整備機構四国本部長賞を受賞された義農味噌株式会社 田中正志社長です。

 

 

〇御社について

父の田中義一が1953年に創業しました。法人化したのは1973年です。地元松前町の偉人、義農作兵衛の「義農」を社名にしました。取り扱い商品は、主力の化学調味料を使わない生味噌をはじめ、様々な種類の味噌、しょうゆ、こんにゃく、ドレッシング、タレなど、百種余りの食品を製造しています。

 

〇従業員の人数構成は?

従業員は約80名です。

 

〇社長ご自身の簡単な経歴について

大学を卒業後、農林水省の食品総合研究所に1年間勤めていました。その後、主任として会社に入りました。社長に就任したのは、創業50周年を迎えた2003年です。

 

〇入社後に取り組んだこと

入社してから20年ほどは会社のあらゆる業務に携わっていました。工場での製造業務、営業、研究開発など、全ての業務を経験したことが、今の自分の強みになっています。創業者である先代の社長は、トップダウンで会社の運営をしていましたので、社員の話を聞くというような仕組みはなかったですね。創業者は商売のプロではありますが、人材育成のプロではありません。そこで、朝礼を実施したり、社員と話す機会を増やしたりする仕組み作りに取り組みました。少しでも良い会社にしたいという思いから、自分なりのやり方で組織つくりを進めて行く過程では、古い社員と軋轢が生まれる場面もありました。今思えば自分が生意気だったのだと思います。ただ、会社を良くしたいという思いは自分も従業員も同じです。試行錯誤をしながらひとつずつ改善策に取り組んで来ました。

また、18年目になる取り組みですが、NPO法人「えひめ掃除に学ぶ会」に社員と共に参加しています。鍵山秀三郎 相談役(イエローハット創業者)のお考えに賛同し、トイレ掃除を通じて学びを得ようと主に松山市内の学校のトイレをお借りして、月1回トイレ掃除を実践している県内の社会人有志が運営している会です。この会に参加して得られる学びは、社内の環境整備の意識醸成、素直さ、謙虚さを大切にする自社の人材育成にも繋がっています。特に社歴の浅い社員さんたちが積極的にこの会に参加してくれているのが特徴です。また創業記念日には、社員全員参加で工場の掃除をしています。

経営についてより深く学び始めたのは40歳を過ぎてから。中小企業家同友会へ入会後は様々な学びの機会に積極的に参加しました。会社の経営理念を作成するための経営指針作成セミナ―は、1回ではなく複数回受講し、経営理念は簡単に作れるものではありませんから、何度も何度も経営指針を修正しました。また、いくら立派な経営指針を作成しても、それを行動にできなければ意味がありません。会社の経営理念を社員と共有し、一緒に実行しながら作成して行くことが良い方法ではないでしょうか。

 

〇人材育成について

人材育成についても、中小企業家同友会で仕組み作りや教育システムについて学んだことを実行しました。伊予の味噌を全国に広げるために、各地で「ふるまい」という試食会を行っているですが、以前は営業の社員のみが担当していました。しかし、今は職種を問わず全ての社員が関わるようにしています。直接お客様の反応を感じることができ、それぞれの業務へのモチベーションになっているようです。

また、採用についてですが、内定辞退ゼロを目指して様々な取り組みをしています。インターンシップでは会社のことを良く知ってもらい、内定後には、運動会などの行事にも参加してもらったりするなど、ミスマッチを無くすような工夫をしています。「相手がしてもらいたいことを提供する」という基本姿勢です。

 

〇採用したい人材

能力もですが人柄を重視しています。その中でも親や仕事に感謝できる人。謙虚さ、素直さを持っていることが大切です。

 

〇今後のビジョン

伊予の味噌を全国に広げて行きたいですね。そのために「ふるまい」を今後も各地で続けて行きます。

また、息子たちは英語、中国語に堪能なので、日本だけではなく海外への進出も視野に入れています。海外展開に向けて、長男を中心に取り組んでいる商品開発や品質管理では、現在取得しているHACCP に加えISOの取得も目指しています。

私は「社員は家族」だと思って会社を経営しています。同じ場所で働く皆が、同じ価値観を持ち、仲良く働くことでお客様を更に増やして行けたら良いですね。

 

 

〇インタビューを終えて

中小企業家同友会でお世話になっている田中社長。同友会では代表理事というお立場で、お仕事でお忙しい合間を縫って、ご自分の今までのご経験を惜しみなく会員さんに提供していらっしゃいます。「社員は家族」という田中社長の言葉が表しているように、インタビューに伺った際には、社員の皆様にとてもあたたかくお迎えいただきました。ギノー味噌という会社の発展の基盤には、社員さんを含めた「家族愛」があることを強く感じました。

Posted by 玉野 聖子