エンカレッジ株式会社 エンカレッジ

Report & Column

  • レポート

経営者インタビュー9:株式会社昆布森 常務取締役 好永 隆之氏

経営者インタビュー9回目は、松前町の若手経営者、株式会社昆布森の好永隆之さんです。

御社について 創業年 業務内容 特徴など

昭和46年10月に設立。珍味の里としても知られる松前町で創業し、48年になります。創業以来、わかめ、芽かぶ、こんぶ、ひじき、ちりめん等の人の体にやさしい「海の恵み達」を大量生産ではなく、職人による丁寧な作業によって製造・加工しています。また、安売りをしないということを私どもの信条としています。

従業員の人数構成は?

従業員は正社員が17名 パートが5名です。年齢層は20代から60代まで幅広いですが、男性社員は8名中6名が20代と若手社員が活躍をしています。

ご自身の簡単な経歴について

大学を卒業後、大手飲食サービス業の総合職として働き始めました。入社半年後には、店長としてパート、アルバイト80名以上の店舗を任されていました。またその後、エリアマネージャーとして大阪、京都の複数の店舗を任されるようになり、1カ月の残業時間が100時間をゆうに超えるかなり過酷な状況で働き続けていましたが、その時の経験が貴重な財産となり、今の仕事に活かされています。

例えば、人件費、原価、予算、など店舗の運営に関わること、調理や接客サービス、スタッフのマネジメントなどなど、会社経営には欠かせない重要な要素を実践で体験することができました。特に「人」のマネジメントについては良い訓練になったと感じています。数字を上げることが自分のモチベーションとなり、他から見るとあり得ない状況であるにもかかわらず、やりがいを感じて働いていました。そして、3年が経ったとき、福岡への異動が決まり、私自身は新しい場所で赤字店舗の立て直しに意欲を持って取り組むつもりでいました。しかし、同時期に父から地元へ戻り、今の会社に入ってもらいたいという要請がありました。迷いはありましたが、「この業界に節目はない。今!と思った時がその時」という当時の先輩の言葉もあり、「今」を感じて昆布森に入ることを決断しました。

経営者になって取り組んだこと

まず考えていたことは、1年間はあれこれ口出しをせず我慢しようということです。会社のことを何もわかっていない自分が、いきなり様々な介入をすると従業員も面白くないだろうという思いがありました。しかし、実際にはその思いは1週間しか持ちませんでした。当時会社の経営はかなり厳しい状況にあり、経営状況改善に向けた対策をすぐに取らなければならないと感じたからです。

まず最初に行ったことは、従業員を全員解雇することでした。かなり思い切った行動ですが、前職での経験から、全く不安はありませんでした。そして、新しいスタッフを採用し、就業規則を整備し、働く環境を整えました。従業員に何かをしてもらおうと思ったら、会社も果たすべき責任をきちんと果たすべきだと考えています。また、若手の採用に向けては、残業をなくしたり、週末の休みを確保するようにしたりしています。また、ムダの廃止、5Sの徹底にも取り組みました。

採用や人材育成について

採用は、言われたことをやるのではなく、自分で考えて行動し、その行動を顧みるこができるという点を重要視しています。また、履歴書を丁寧に書いているかどうかも注目しています。相手に配慮した行動がとれるかどうかは大切です。育成については、従業員全員にチャンスを与えるようにしています。製造では、完全分業制にし、一人一人が製品の完成まで責任を持って当たれる仕組みです。製造以外では、研修、出張の機会は全員に投げかけています。そのチャンスを掴むかどうかは本人次第。「できないことは一切ない。やろうとしないだけ。」ということを伝えています。研修等の自己研鑽の機会に積極的に参加し、自分自身の武器を持ち、成長に繋げてもらうことが狙いです。

新卒採用は今年で4年目ですが、合同説明会では学生へのプレゼンテーションを従業員に任せています。これも従業員の成長の機会のひとつとして取り組んでもらっています。

今後のビジョン

今後は貿易を本格的に業務の柱としていきたいと考えています。現在は、ハワイ、ベトナム、台湾などとの取引があります。味は評価されているので、内容量、パッケージの工夫など、それぞれの国の文化に合わせた商品づくりをしていきたいと思います。

 

インタビューを終えて

中小企業家同友会の例会などでお目にかかる機会が多い好永さん。松前支部の幹事長として、実務をテキパキとこなし、的を射た発言で会の進行をマネジメントされています。今回インタビューをさせていただき、好永さんの素晴らしい行動力は、前職でのかなり過酷な状況を乗り越えたご経験から来るものなのだと納得いたしました。というと、強引なイメージを想像されるかもしれませんが、好永さんの場合はそうではなく、細やかな心配りをなさる繊細さも持ち合わせていらっしゃいます。これからも、若手経営者として、行動力と人に対する心配りでご活躍されることと思います。昆布盛の商品、私も愛用者のひとりですが、世界各地の人々に喜んで食べていただける日が一日も早く来ることを楽しみにしています。

Posted by 玉野 聖子