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経営者インタビュー7:有限会社オルソ本田 取締役 本田美紀 氏

経営者インタビュー初の女性は、有限会社オルソ本田の本田美紀さんです。

女性の生き方、仕事への向かい方、社会や地域とのかかわりの中で。といったことを深く考えさせられる時間でした。

御社について 創業年 業務内容 特徴などの基本情報

平成10年、ご主人(社長)と共に立ち上げました。オルソとは、オルソ―シス「装具」の略です。この会社はどんな会社?と意識のアンテナを立ててもらえるようにと名付けた義手・義足・装具を制作している会社です。

http://ortho-honda.com/index.html

不慮の事故や、病気により義手や義足などが必要になる方のため義手・義足をつくり、高齢になることで必要となる装具の製作と合わせて、お子さんの装具を制作しています。子どもさんは成長に合わせて作り替えが必要となり、また学校生活にあわせてメンテナンスは頻繁にあるというのが現状です。そのようなことから、一生のお付き合いになる方もたくさんいらっしゃいます。

従業員の人数構成など教えてください

20年前の創業時に4人の社員と共にスタートし、現在は新たに入社した社員を合わせて5名とパート1名。内訳は義肢装具士の国家資格保持者3名、技術者3名です。創業時からの同じメンバーも含めて今年で20年になりました。

ご自身の簡単な経歴について

松野町で生まれ育ちました。小学校の高学年で自立した人間になろうと心に決め、宇和島東高校を卒業後、岡山の看護学校に進学しました。看護師として仕事をスタートさせましたが、結婚を機に専業主婦になりました。しかし、それは義母の介護のスタートでもあり、義父、実弟、実母と、同居や遠距離での介護生活、その延長線上の看取りも経験しました。子供も3人おり、介護と子育てのさなか、平成10年に夫の独立と共に会社を立ち上げました。

経営者になって取り組んだこと

創業時に4人の社員がいたというのは、今となっては無謀だったと思うこともあるくらい、会社経営について何も知らないままで創業しました。この業界は一人前になるためには、10年必要と言われる業界です。専門的な技術を研鑽してもらうスタッフを支えるため、私は事務仕事などを一手に引き受けています。

立ち上げの時考えていたことは「社員が辞めない会社にするにはどうしたらいいのか。」

トップダウンで何かが伝わるのではなく、何でも言い合える関係にしようと思いました。そのために経営者とは言え、「ミスしたら謝る・分からないことは聞く・できない事をできない」と言う。という事を意識して社員に接しています。

それと社長である夫と決めていたのは、「全社員を送り出すまで自分たちは帰らない。誰よりも早く来て、最後までいる。」という2点です。

経営者が残っていても、「お疲れ様でした」帰ることができる会社の雰囲気を作ることです。そんな風通しの良い組織を意識しています。

採用や人材育成について

国家資格の必要な仕事ということと、業界のしきたりのようなものもありますが、創業して20年、ずっと弊社で仕事をしてくれているからこそ、社員さんも高齢化してきます。経営者も技術者も事業承継が必要だと考えています。

息子が5年前に入社し、技術者として一緒に仕事をしています。息子には外の社会を見てきてほしいという思いもあり、大学卒業後、金融系の企業で3年仕事をしたのちに、本人の意思で技術者養成の専門学校に入り勉強して入社しました。「創業時からいる社員とも対等に話せるくらいの専門知識を身に付けて帰ってくるように。」と注文をつけ専門学校に送り出しましたが、その約束は達成しているように思われます、本人もその自覚をもって仕事をしてくれています。

今後のビジョン

1年前、当時、小学校6年生の女の子が自由研究で、弊社の事とご自身のお母さんのことを3年の歳月をかけ昨年発表してくれました。その女の子は、義足の母親の定期的なメンテナンスに同行していたことから、いずれは自分も義肢装具士としてお母さんの義足のメンテナンスをしたい。という内容でした。

私たちは、彼女が成長した時に迎え入れられる会社にしたいと思っています。今後は、今、技術者として頑張っている息子への事業承継を行いながら、女性の技術者も育成したいと考えています。

インタビューを終えて

私が本田さんに出会ったのは、5年前の3月に開催された中小企業基盤整備機構四国本部が主催した「えひめパワーアップセミナー」でのことでした。

愛媛をパワーアップするために、地元で頑張っている経営者の方に悩みを伺って、全国のプロフェッショナルが課題を解決するというセミナーのナビゲーターをしていた時に、凛とした姿で課題をお話していたのが本田さんでした。

それからお声をかけていただき、女性の生き方を考える会などに呼んでいただくなど交流を深めてまいりました。「繊細で大胆」という言葉がピッタリな本田さんには、女性として母として経営者として、相談に乗ってもらったり、刺激を受けたり、多くの学びをいただいております。

今回改めて、会社設立からこれまでの経緯を伺って、本田さんの芯の強さと人に対するまなざしの温かさに触れた思いがいたしました。ありがとうございました。

Posted by 玉野 聖子